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札幌高等裁判所 昭和40年(く)24号 決定 1965年6月23日

少年 B・M(昭二三・一〇・二九生)

主文

本件抗告を棄却する。

理由

本件抗告理由は抗告申立人提出の抗告申立書記載のとおりであつて、その要旨は一緒に悪い事をした共犯の人が中等少年院送致にきまり、自分だけが特別少年院送致となつたが、自分はまだ年が一六歳だし、身体も少さくあまり丈夫な方ではないので特別少年院ではなく中等少年院を希望するというにある。

よつて本件少年保護事件記録および少年調査記録を精査すると、少年は年齢こそ原決定当時未だ満一六歳六ヵ月の年少少年ではあるが、既に昭和三八年一一月一二日保護観察中に犯した窃盗等の非行事実により初等少年院送致の決定を受け、同三九年一〇月二二日仮退院し釧路保護観察所の保護観察下にありながら、同年一二月頃から不良交友を再開し、○○○家一家の身内に身を寄せ、その舎弟分となり、本件非行を反復したものであつて、その動機、態様、交友関係、性格、行動傾向からみて少年に対しては綜合的な矯正教育を施して規律ある勤労生活の体験を修得させ、非行に対する反省の機会を十分に与え、性格を矯正させることが必要であつて、このためには相当強力な指導が必要であると認められる。

してみれば、原審の少年に対する措置はまことに相当であり抗告人の論旨は理由がない。

よつて少年法第三三条第一項、少年審判規則第五〇条に従い、主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 矢部孝 裁判官 中村義正 裁判官 半谷恭一)

参考 原審決定(釧路家裁昭四〇(少)四四四、四七一号昭四〇・五・六決定)

主文

少年を特別少年院に送致する。

理由

(非行事実)

少年は、AおよびBと共謀のうえ、

(1) 別紙非行事実一覧表記載のとおり、昭和四〇年一月○○日から同年四月○日までの間前後一六回にわたり、川上郡○○町△△町○村洋服店ほか一五箇所において、現金合計約三一万八、五〇〇円および物品六五点を窃取し、

(2) 同年一月○○日午後一〇時三〇分頃川上郡○○○町○路石油販売株式会社○○○営業所において、窃盗の目的をもつて、同所宿直室の窓の金網を引つ張り、もつて同室内に侵入しようとしたが、宿直員に発見されて逃走し、その目的を遂げず、

(3) 同年四月○日午後四時頃上川郡○○町字○町士別警察署○○巡査部長派出所前路上において、業務その他正当な理由がないのに、刃体の長さ六センチメートルをこえる刃物であるナイフ(刃体の長さ一一センチメートル余、昭和四〇年押第四六号)一丁を携帯し

たものである。

(法令の適用)

(1)の事実につき 刑法第二三五条、第六〇条

(2)の事実につき 刑法第一三二条、第一三〇条、第六〇条

(3)の事実につき 銃砲刀剣類等所持取締法第二二条、第三二条第一号

(処遇)

少年は、昭和三八年一一月一二日当裁判所において初等少年院送致の決定を受け、翌三九年一〇月二二日同院を仮退院したものであるが、同年一二月頃から職に就かず、不良交友を再開し、○○○家一家身内の舎弟分となり、本件非行を反復したもので、その非行における立場にも主導的であり、非行の態様も悪質で、動機に同情の余地も認められない。以上の諸事情その他少年の性格、環境に照らせば、少年を特別少年院に収容して矯正教育を施すのが相当と解される。

よつて、少年法第二四条第一項第三号、少年審判規則第三七条第一項を適用して、主文のとおり決定する。(裁判官 小瀬保郎)

非行事実一覧表

番号

犯行日時

犯行場所

被害者

(所有者)

被害品名

数量

時価

昭和四〇年一月○○日午後七時頃

川上郡○○町△△○村洋服店舗

○村○蔵

ワニ製ガマ口、鍵

一個

二個

一、〇〇〇円

同右日午後一〇時四〇分頃

川上郡○○○町○町内石○雑貨店舗内

石○清

現金

一、二五〇円

同月△△日午後一時頃から同四時〇分頃迄

川上郡○○○町字○○○×××店舗内

更○武

ジャンバー

一枚

五〇〇円

同右日午後四時頃

川上郡○○○町○○番地店舗内

○口○英

現金

財布

一個

四、〇〇〇円

二〇〇円

同右日午後八時三〇分頃

川上郡○○○町字○○店舗内

○田○子

現金

二、五〇〇円

同右日午後七時頃

川上郡○○○町○○○○俣商店内

○俣○治

現金

六二、〇〇〇円

昭和四〇年四月○日午後五時〇分頃

網走市○○○西○丁目○○商店事務室内

土○勲

現金

印鑑

小切手

集金カバン

一個

一冊

一個

約二〇、〇〇〇円

二、〇〇〇円

同右日午後五時二〇分頃

網走市○○○西○丁目○山商店休憩室

○山○夫

現金

集金カバン

一個

約 五〇〇円

一〇〇円

同右日午後五時三〇分頃

網走市○○○西○丁目○木商店内

○木○郎

現金

印 鑑

集金カバン

預金通帳

一個

一個

一〇個

二五、〇〇〇円

一〇

同月△日午後四時二〇分頃

紋別市○町○丁目

○上○子

現金

七、〇〇〇円

一一

同右日午後四時三〇分頃

紋別郡○○町○町○○○

○藤○○郎

現金

集金カバン

一個

二二、三〇〇円

五〇〇円

一二

同右日午後○時三〇分頃

名寄市○○○南○丁目○○廉売店

○内○子

現金

財布

現金カバン

預金通帳

一個

一個

一通

二、〇〇〇円

一、二〇〇円

二〇〇円

一三

同右日午前〇時三〇分頃

名寄市○○○南○丁目店舗内

○木○盛

現金

集金カバン

預金通帳

印鑑

一個

三通

一個

一五、〇〇〇円

五〇〇円

一四

同右日午前〇時四〇分頃

名寄市○○○南○丁目○○市場内店舗内

○川○一

集金カバン

領収印

実印

集金カード

一個

一個

一個

一、三〇〇円

六〇〇円

一、〇〇〇円

一五

同右日午後〇時五〇分頃

名寄市○○○南○丁目店舗内

○西○雄

現金

ネツクレス

指輪

カバン

預金通帳

印鑑

七本

五個

一個

七通

四個

五三、四八一円

二九、三〇〇円

九、五〇〇円

二、〇〇〇円

一六

昭和四〇年四月×日午後二時三〇分頃

士別市○○○東○丁目○○市場内

田○剛

現金

集金カバン

預金通帳

小切手

三個

三通

二枚

一〇三、四六九円

二、〇〇〇円

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